「晴れゆく空」で泣きそうに

原稿を書くことはもちろん、そのほかの雑用含め、目の前に山積する問題を、どうやって順序よくかたづけていくか。手に余ると、なにも手につかないで、ただぼうっとしたり。なにをやってるのか、とギターを手にボロロン。
昨日は代々木上原本屋大賞を受賞したばかりの佐藤多佳子さんにインタビュー。その前に時間があったので、代々木上原近くにある、いまどきの古本屋を再訪。『本屋になりたい』で取材した。相変わらず、おもしろいところを厳選して、面だししたり、並べ方にも神経を行き届かせた店だ。
佐藤さん、その作品みたいに、地味で清潔な感じ。落ちついて、言葉を探しながら喋る感じ。能弁ではない。「しゃべれども、しゃべれども」の世界。近くの路地で撮影を終え、さて、銭湯へと思ったら、急に驟雨。あきらめて、車中の人となった頃、雨が上がり晴れ間が覗く。吉祥寺で下車してぶらぶら。でも無印とパルコと古本屋しか行くところないんだよなあ。ほんと、行くとこ、知らない大人だなあ。
「藤井」で買った、谷口ジロー『晴れゆく空』を帰りの電車で読んでて、泣きそうになった。あぶない。バイクに乗った高校生、車の四十代サラリーマンが衝突事故。奇跡的に生き残ったのは17歳の若者の方だったが、意識は42歳の男性。そんなドラマだ。ここまではよくあるパターンのようだが、ここから、谷口はもう一つのドラマを用意する。二つの違った人生を重ねることで、生きる意味を問う。絵の力がすごいや。
深夜、焼酎をかっくらいながら、ビッグイシューの連載、何を取り上げようと思案しながら、森茉莉『贅沢貧乏』に決め、あれこれ集めて書きはじめる。中野翠『ムテッポー文学論』だっけ、が見つからず、あああ、とうとう探している本が見つからない状態になってしまった。