松葉でラーメン、ンまーい!

日曜の朝、目覚めたらいい天気。かねてからの懸案だった、トキワ荘、松葉ツアーへ出かける。娘に「松葉でラーメン食べるか」と聞くと、「うん、いこ、いこ」という。妻も誘い、家族ででかけることに。中央線「東中野」から都営12号線に乗り換え「落合南長崎」下車、トキワ荘跡見学、松葉でラーメン、あとは目白周辺を散策とコースをきめる。
娘に、いちおう「まんが道」を持っていきな、と言うと、「たしか松葉が最初に出てくるのは7巻か8巻」と言いながら、中公マンガ文庫版を探しにいく。「ビンゴ」と言いながら戻り、さっそく松葉のラーメン登場個所を予習している。
外は風が強い。バス停前の木が大きく揺れる。東中野から地下鉄「東中野」へ乗り換え途中、「ブ」がある。小さな店であんまり期待していなかったが、ここが大変な店だった。中央線沿線の古本屋並みの品揃えでクズがきわめて少ない。新しい本ならなんでも、というのではなく、ちゃんとチョイスしてある。文庫の分類にも「澁澤龍彦」なんてジャンルがある。拾いものを数冊、CDでベン・ウェブスターのアンソロジーを買う。ここはまた来よう。
トキワ荘のマンガ家たち御用達の中華食堂「松葉」は、旧瀬戸通り沿い、現在の地名で言えば、豊島区南長崎3丁目4番地にある。なんてことない小さな店。ただし店の前に、「まんが道」に登場する我が店のシーンをコピーして貼ってある。娘と記念写真を撮る。
家内とぼくはタンメン、娘はワンタンメン。ちょうど、ぼくらより先に独り、若者がラーメンを食べていた。まるで若き日の「トキワ荘」の藤子、寺田、赤塚、石森といった風情。娘がワンタンメンを一口食べて「ンまーい!」という。「なに、それ?」と家内は言うが、ぼくはわかってる。「まんが道」で満賀が最初に松葉のラーメンを食べたときに言うセリフなのだ。もう一方的に娘のペース。タンメンはちょっと塩気が足りなくて物足りなかったが、まあ、そんなことは問題ではない。松葉で食べたことが重要なのだ。
食べ終ったころ、先に来ていた若者がお金を払って帰ろうと立ちあがったとき、ぼくの方をみて「あのう、失礼ですが岡崎さんですか」と聞く。これには驚いた。どうも前田・北村、つまりチンキタコンビの知り合いで、この日、わざわざトキワ荘ツアーに来たらしいのだ。そこで偶然、ぼくと出会った。こんなこと、あるんだなあ。広い東京で。
あまりに驚いて、ちゃんと話しできなくて悪いことした。これ、もし読んでいたら、ちょっとコメントください。
このあと、トキワ荘跡を見学(日本加除出版という建物が建っていた)。バスで目白へ。線路脇を自由学園まで歩く。ライトの設計。喫茶代を含む見学600円、というので入館し、食堂でコーヒー。これは、なかなかいい感じ。また、来てみよう。散歩道に敷石が敷きつめてあるのもいい。
新宿で用事があるという妻と別れ、娘と荻窪下車。娘を「ブ」へ放り込んで、「ささま」でちょこちょこっと買う。思潮社現代日本詩集」の野間宏『歴史の蜘蛛』が105円は安い。北杜夫『高みの見物』は新潮小説文庫で、宮田武彦の挿絵がどれもいいなあ。創元新書『すまいの思想』は著者が西山卯三。西山の『住み方の記』文藝春秋は、第一級の名著でね。