高尾も紅葉にはまだ早い

朝、抜けるような青空を見て、発心。少し雑用をすませ、高尾山へ。いつものように稲荷山コース。南向き斜面。木々を透かして陽があたる道を歩くのは気持ちいい。ただし、この日、高齢者の山登り客多く、遠足の小学生など団体もあり、彼等はみな、ぼくのような若い(いま、山歩きする年齢層のなかでは、ぼくは若い)男を見ると、さっと道の端に寄り、「お先にどうぞ」という姿勢を取る。仕方なく追い抜く、仕方なく追い抜くで、あっというまに高尾の山頂近くまでたどりつく。こんなに早く第一のピークに来るのは初めてか。紅葉にはまだ早いようだ。
しかし、これがいけなかった。ペースが早すぎて、次の小仏城山へ向う途中に、ガクッと突然足が止まる。ヘリコプターを呼んでくれ、という有り様。少し休んで、なんとか城山の茶店まで行けたが、足はがくがく。いつものようにワインの小瓶と弁当。茶店なめこ汁とコーヒー。それにこの日、大きな蜜柑が二個150円で売っていて、これも買う。この蜜柑がうまかった。ぺろりと二つ、たいらげる。澄んだ空気に、気分がせいせいする。
すると、どこかで、「あ、あんなところに富士山!」と大きな声が挙がる。真正面にありながら、気づかなかったらしい。ふつうの目線で遠くの山並を眺めているより、はるか高くに、ぽっかり富士山はある。それだけ標高が高い。だから、見上げないと、富士山は見えない。ああ、ほんと、とあちこちから歓声があがる。
小仏峠からバス。満員だった。バスを待つあいだ、読みかけの司馬遼太郎新選組血風録』を読む。ケーブルで、モノクロの、栗塚旭が土方をやった「新選組血風録」を再放送していて、ときどき見ている。
帰宅してから、また雑用をかたずけ、サンデー毎日川上弘美『真鶴』書評を書く。