「狐」死す

昼飯を食べるため国立へ。「ブ」「いとう」をひやかして、あれこれ買い込み、国立駅西友で買物をしていたら、携帯電話に珍しく着信。出ると、電波不良でよく聞こえない。誰が喋ってるのかもわからない。中野翠さんがどうとか、言っている。さっき「ブ」で山田風太郎『奇想小説集』講談社大衆文学館を買って、中野翠さんの解説を読んだところだったので、変な感じだったが、やがて詳細が明らかになって驚愕する。
電話はサンデー毎日編集部Iさんからで、同誌の中野さんの連載コラム「満月雑記帳」で、山村修さんが亡くなったことを書いているというのだ。くわしくは、来週発売のサン毎掲載分なので、紹介できないが、あの素晴らしい書評を書き続けた「狐」こと山村修さんが、8月14日に亡くなったという。「ええっ!」という言葉とともに、思わず天を仰ぎ「わあ」と声をもらす。炎天の路上で、まわりの目も気にせず、強いショックを受け棒立ちとなる。
サン毎のコラムで「狐がついにそのベールを脱いだ」を書いたのが8月13日号。発売は日付の一週間前ほどだが、たぶん山村さんには読んでいただけなかったと思う。じつは、コラムでは書けなかったが、山村さんが肺ガンに冒され、手術をしたが、かなりお悪いと聞いていた。電話取材さえかなわず、メールでのやりとりで質問にお答えいただいたのが7月22日。質問を送って、2、3日の余裕をみてお答えいただくつもりだったが、すぐに返事があった。2、3日の余裕などと考えるのは健常者で、山村さんにその余裕はなかったのだろう。無理をさせたのではないか、と悔やまれる。それでも、山村のことを非力ながらも書けてよかった。
中野さんの渾身の、といって、いつもの中野タッチの追悼文は、来週火曜日発売の「サンデー毎日」に掲載される。「狐」ファンはぜひ読んでください。
海ねこさんから、阿川弘之『なかよし特急』中央公論社が届く。「彷書月刊」に目録が載り、そこで見つけて、すぐに注文を出したのがあたったのだ。ぼくの探求書リストの筆頭にあった本。絵本の体裁の児童書で、写真と挿絵がふんだんに入っている。小説のスタイルで、日本とアメリカの鉄道についてくわしく紹介されているが、一読名著だと思う。検索をかけたが、日本の古本屋では出品なしの稀少本。これが新品のCD一枚と同じ3000円とは安い。