ゆふがた、空の下で

二カ月に一度の通院、検査。待ち時間が長く、3時間はつぶれる。国立まわりで、「ブ」で読む本を仕入れる。井上ひさし『イソップ株式会社』は、まだ新刊で和田誠のきれいなカラーイラストが入っているのだが、105円。あと宮本輝エッセイ集『血の騒ぎを聞け』新潮文庫中原中也詩集『山羊の歌』角川文庫は、カバーと口絵がきれいで、編者が佐々木幹郎、ということで買ったが、カバー口絵のデザインは間村俊一さんだ。石川淳森鴎外岩波文庫もめったに見ないからね。
検査の結果は思わしくなく、薬が強いものに代わり、今日から断酒だ。ウォーキングも再開せねばならない。といっても、深刻に考えているわけではなく、身体のためにはそのほうがいい、ぐらいの感じだ。どうぞ、憐れみや同情を寄せないでください。
TBSに候補作2册を書名、送ってみたが、担当者の反応は悪い。ストライクゾーンが狭く、なかなか通らない。ぼくの少ない球種は、いずれもそのストライクゾーンからははずれている。胃が痛む思いだ。しかし、いまさら、新たに探し、読むヒマがない。こまった、こまった。それに朝日ベストセラー快読の締めきりなのだが、対象の本を前にうんうんうなって一行も書きだせない。これも自分のストライクゾーンと違う、荒れ球なのだ。毎回、こんな状態で、毎回なんとかなっているから、という自信で押し切るしかない。しかし、書き出すための最初の一滴がなかなか絞り落ちて来ない。落ちてくれば、それで流れ出すのだが。もうすでにあの手もこの手も使ってるしな、と半日を費消する。喉が乾き、頭がぼうっとしてくる。
朝日カルチャーセンターから電話。担当者は、角田さんと三浦しをんさんのトークショー打上げで言葉を交わした方。そのさい、ある編集者が推薦してくれたのだ。「ぜったい、岡崎さんの古本で、講座を開くべきですよ」と。そのときはお酒の上での話だと思っていたが、どうやら実現したらしい。この秋、二回だけ、やることにする。これでこの手の講座は4つ目。喋ること自体は何でもないが、しかしこう数が増えると、なかなか大変だ。
中原中也「いのちの声」最終行。
「ゆふがた、空の下で、身一点に感じられれば、万事に於て文句はないのだ。」
そうだ、そう感じられれば、文句はない。