国立、桜開花す

6時に目覚ましかけたのだが、起きたのは9時だ。なに、やっとるだ。今日は、朝日のベストセラー快読と、TBSの放送原稿をつくらなくちゃいけない。それに、ポプラ社から『古本道場』の念稿が届く。臨戦態勢だ。少しでも早く、その気にならねばならないのに、そんなこっちゃ、その気になりまへん。
日垣隆『世間のウソ』を、傍線引っ張ったところを中心に再読。朝日用だ。おもしろいけど、何かひっかかるんだよな。読んでいてカチン、と来るのだ。ああ、ああ、あんたはかしこい。わてはアホや。とつぶやきながら読んでしまう。いちいち自著をかっこつきで文末に示すことや、自分の子どものことを書くところなど、そんなん、いらんとちゃう、とツッコミをいれたくなる(ぼく自身もしょっちゅう子どものことを書いてるくせに)。きっと、生理的に合わないのだ。だから、原稿料のことを書いた新書も、おもしろいらしいけど読まないと思う。
昼食後、散歩がてら自転車でふらりふらり。そんなことしてる場合と違いますのに。逃避だ。立川栄「ブ」で、伊藤比呂美片山健なっちゃんのなつ』かがくのとも、を買う。
 「なっちゃんは たなかさんちの にわが すき
 すこし ちょうだいね
 すうと あまい あかい さるびあ
 いろんな いろの おしろいばな
 はなを もんだら つめの さきに
 たねを むいたら はなの あたまに」
分かち書きがつくるリズムが楽しい。夏のくさいきれが匂ってきそうな絵本だ。
文庫では、松本清張『蒼ざめた礼服』新潮文庫が、裏カバー解説を読むと、主人公が古本屋で買った古雑誌から物語が発展していく。阿佐ヶ谷、乳母車のような屋台で女性が店番している古本屋というのがいい。それなら買わなくちゃ。エドガー・スノー『中国の赤い星(上下)』ちくま学芸文庫も105円ならね。レジで、ぼくの前に、20冊ばかり買っていた、無精髭、ぼさぼさ髪の男性がいたが、業者かしらん。どんな本を買ったか、気になりますねえ。
国立駅前へ移動。自転車こぎながら「しゃあないなあ」「やっときゃよかったなあ(なにを)」「もうええんとちがうの」など独り言をいってる自分に気づく。あぶない、あぶない。ひげはやして、昼日中に、あぶないおっさんや。アメリカなら拳銃で撃たれます。
大学通りの桜並木にちらほらと桜の花が開いております。花見の宴会はきらいだが、桜の花を、こうやって黙ってみるのは好きだ。平日、昼ひなかの国立は、じいさんばあさん、おばさん、若者だけや。40、50の男はおりません。国立「ブ」では、漫画文庫コーナーで、坂口尚『VERSION(上下)』講談社漫画文庫を105円で発見。買っておこう。坂口尚は好きなんだ。しかし絵としては、昔の絵のほうが好き、かな。
北海道新聞から書評用の、青山真治『ホテル・クロニクルズ』講談社が送られてくる。今週号の「サンデー毎日」には、成瀬巳喜男について2ページ書きました。また、立ち読みしとくんなはれ。文藝春秋のSさんから、「諸君!」の編集長になった旨を通知するハガキが届く。ぼくは、ずいぶん前に、一度書評を書かせてもらっただけなのに、年賀状等も欠かさずいただいている。なんちゅう、律儀な編集者だろうか。ぼくにまねができるか、できない。しかし、忘れられていない、と思うだけで力づけられる。それほど、頼り無い稼業なのだ、この仕事は。夕方、朝日の原稿を送る。コルトレーンを聞いて、『VERSION』を読んでぼうっとして、ひさしぶりに家族で夕食をして、もう延ばせない。TBSの原稿だ。