4月2日(土)3時40分
ブログ化初の日誌を書く。はたして、これでいいのかどうか、不安なままのスタートであります。
さて、3月29日からの関西帰省を早足で書き留めておく。姉の次女が結婚し、地元福岡で結婚式を挙げたのだが、関西圏に住む者、あるいは、ぼくのように東京在住で出席できなかったもののために、京都で披露パーティを開くことになったのだ。これが30日。

せっかくだから、その前後にスムースの集まりができないものかと、林哲夫さんに話していて、それが29日に実現した。両方とも会場は弟が京都・木屋町で営業しているバー「ディラン・セカンド」にて。
本当は、京都へ帰るのに、青春18きっぷを使って東海道線で、と思っていたが、そのきっぷがどこへ行ったか、わからなくなった。九州取材のときに一回使って(それも、久留米で地震にあい、有効には使えなかった)、それっきりになっていた。31日には、京都から福井まで日帰りの古本旅を、と企画していたのに。けっきょく新幹線で帰る。

29日、昼過ぎに新大阪に着き、その足で江坂へ移動。ひさしぶりに天牛緑地公園店へ行く。同店は、駅から離れていて、次の緑地公園駅から向かうほうがやや近いが、緑地公園から先は路線の管轄が変わり、運賃が上がる。そこで江坂から歩くことに。緑地公園から歩くのと、5分ほどしか変わらないと思われる。
天牛緑地公園店はモダンなビルの1階2階が店舗。とにかく広く、本の量も多い。そしてなにより、安い。
大阪在住のころは、原付をバタバタいわせて、よく通ったものだった。この日は、スムース友の会で古本オークションをするためのブツを仕入れることに。

買った本をメモしていなかったが、講談社現代新書柳原良平の船の本、殿山泰司『しゃべくり105日』、小学館の子ども百科『ゴジラ』などを仕入れる。自分用には、高橋英夫花田清輝』380円、天沢退二郎宮沢賢治の彼方へ』ちくま学芸文庫150円。

スムース友の会のことは、すでに林哲夫さんはじめ、出席した多くの人が日誌で報告ずみ。ぼくは省略。
スムースの仲間と別れ、山本善行とふたりで三条からタクシー、ジャズ喫茶「ヤマトヤ」へ。いつものコースだ。いつも深夜はぽつりぽつりとしか客がいないこの店が、この夜はどうしたことか、団体が流れこみ一杯に。となりのテーブルについたのが、S美の女子美大生と、ひとりだけ歳をくった、かなり酔っぱらった御婦人。この御夫人がやたらぼくと山本に話し掛ける。「まあ、きれいな人の隣りに座れて幸せ」と、この「きれいな人(ぼくたちのこと)」を連発。山本と二人、苦笑する。どこをどう見て、われわれが「きれいな人」なのか。しかし皮肉を言っているようには見えない。「ギョーカイの方ですか?」とも言われる。不思議なおばさん、なり。

30日は夕方の姪の結婚披露パーティまで間がある。朝、早く出て、枚方へ。父の墓を参る。その足で、かつて小学校の友人たちが住んでいた、旧街道筋から、36年ぶりに卒業した母校「枚方第二小学校」を訪ねる。3月の北九州行きで、ひょんなことから同じ小学校の卒業生と出会い、そのときから、チャンスがあれば母校を訪問しようと考えていた。ちゃんと書くと長くなるが、とにかく母校を迷いながらも訪問し、北九州で出会った同窓生の家も見つけ、ついでに近くの喫茶店で貴重な話を聞いてきた。小学校の校舎はほぼ昔のまま。ただし、運動場を作るため山ひとつ切りくずした斜面にはマンションが建っていた。学校の様子を見ようと、周囲を回ると、となりに畑があり、おじさんが農作業をしていた。フェンスごしに声をかけ、母校についていろいろ話を聞く。周囲にT姓がたくさんあり、ぼくの同級生にも数人、T姓がいた。聞くと、このおじさんもTで、みな地元在住。なおも話をすると、おじさんの娘がぼくの同級生であることが判明。喫茶店では、上品で美しい女性店主に話を聞く。北九州で知り合った同窓生の家のこともよく知っていた。しかも、不在だったが、旦那さんは枚方第二小の卒業生。ぼくのそのまた先輩であったなどなど。収穫の多い再訪になる。

夕方から京都の古本屋を回ることに。尚学堂では昭和51年の小学六年生付録『まんがの秘密』を500円で。ビッグ錠川崎のぼる伝、石森章太郎藤子不二雄伝、古谷三敏赤塚不二夫伝など漫画による小伝記が貴重。水明堂では森内俊雄『翔ぶ影』角川文庫120円、表のがらくた均一段ボールから、キングの付録「明治大正昭和大絵巻」100円。山本善行のなわばり、三条「ブ」でイアン・マキューアンアムステルダム』新潮クレストを拾う。 

31日は、山本を呼び出し、京阪沿線ふるほん行脚に。その前、昨日、実家の近くに止まった伯母と従姉妹が、やってきて、あれこれ昔話を。うちの岡崎は、母方の名で、母は四人姉妹の長女。この日、家に来た伯母はその末妹。岡崎の名が途絶えることを心配した祖母が、この四人姉妹が結婚するとき、亭主に岡崎の名を名乗らせた。うちの親父は森本姓。養子になるのがいやで、一計を案じ、戸籍をいったん抜いて、新戸籍を取り、岡崎を名乗る。まあ、そんなことを含め、あれこれぼくが知らない話を聞いた。伯母は話芸の達人で、何度も腹をかかえて笑う。これは真剣に一度テープを回して、取材しておかなければと思う。

京都へ帰ると必ず2度、3度と行く喫茶店でコーヒーを飲みながら山本と待ち合わせ、京阪電車で寝屋川、千林と回る。寝屋川「金箔書房」は、ぼくが発見した店で、山本に教え、山本がその後常連となり、本に書いたりした。店主がもと天地書房で勤めていたこともあり、天地と同じく良書がとにかく安い。この日、須田一政写真集『わが東京100』400円、表の均一で昭和3年の『第一毛糸あみもの百種』を100円、宮脇俊三『中国火車旅行』角川文庫50円を拾い、レジへ持っていくと店主が、ぼくの顔を見て「ああ、どうも」と笑う。どうやらぼくのこと知ってるらしい。先に支払いを済ませた山本が、ぼくが来ていることを教えたのだろうと思っていたが、後で確かめると、山本は何も言っていない、という。よく、初対面で、顔だけ見てわかったものだと思う。「このお店ができたころ、よく通ったんです」とぼくがいうと、それは覚えていなかったようだ。

続いてガードをくぐって高架下脇にある「ひまわり堂」へ。ここは雑本店。ただし文庫の値付けは安い。なんと80円なんてのがある。金箔は文庫50円から、と寝屋川はかなり価格崩壊がすすんでいる。神吉拓郎『たたずまいの研究』中公文庫80円、マルキ・ド・サド『恋のかけひき』角川文庫100円を買う。ついでに寝屋川駅前「ブ」へ。佐藤泰志海炭市叙景』の帯つき初版を見つけて買うが、山本が持っていないというので、これは譲ることにする。

千林はなんといっても二人にとって、最初の古本修行の場となった思い出の地だ。同じく守口高校卒業生で、ぼく、山本と合わせ「3バカ古本兄弟」と言われた松川を呼び出して、あとで待ち合わせ。山口書店でぼくは、友部正人『耳をすます旅人』水声社を200円で。山本は自著『古本泣笑い日記』を200円を。あーつかれた。とりあえずここまでアップして以下、次回へ。