永島慎二『シリーズ黄色い涙 漫画家残酷物語 全』(朝日ソノラマ)は、1000ページもある大冊で、ここに先日話題にした「陽だまり」が収録されている。ひさしぶりに読んでみる。川本さんが書いているように「西武新宿線 上井草駅附近」と、ちゃんと書かれている。時代は昭和39年初秋。漫画が書けなくなって、金銭的にも行き詰まった若者が、毎夜、新宿のジャズ喫茶で夜を明かす。ウェイトレスの女性に誘われ、二人で新宿の町を歩き、一番電車で上井草へやって来る。「いいところがある」と連れて来られたのが、上井草球場だ。主人公曰く、かつてプロ野球が使い、巨人軍なんかもやって来た。東京オリンピックで手を入れ、新しく競技場として使われる予定がダメになり、「斜陽球場」と呼ばれている。朝日が上り、草野球が始まるが、二人は外野の芝生で眠り込んでしまう。秋になって、涼しくなったら、上井草へ行ってみよう。