野火止用水を歩く

凝り固まった屈託をほぐすため、外出。武蔵野線「新座」で下車、驛から15分ほど歩くと「平林寺」というお寺の境内が宏大な雑木林になっている。そのまわりを野火止用水に沿って歩き、一周し、野火止大門から黒目川へ出て、川沿いに朝霞まで歩く。9キロのコース。
境内の林に沿って流れる疎水、反対側は畑。とんぼが群れて飛ぶのを見た。それにあちこちに蜘蛛の巣が光を受けて光っている。こんなにたくさんの蜘蛛の巣を見たのは生まれて初めてだ。
黒目川を越え、膝折というバス停近くに「ピエロ」という古本屋があったみたいだが、そこまで行って戻ると遠回り。「古ツア」さんにまかせて、先を急ぐ。黒目川の土手が途中まで白い土の道になっていて、ときどき散歩する人とすれ違う。朝霞まで歩くと、さすがに疲れた。2時間弱かけて、1万3000歩の散歩だった。
北朝霞朝霞台の駅がくっつく駅前に、「ブ」があるが、ひとまわりしてみても何も買えない。駅まで歩くと、「さとう書店」という古本屋の看板を見つける。下が松屋。ビルの二階が店舗だが、階段下のスペースが1冊100円、3冊200円の均一になっている。螺旋階段を上がると、けっこう広いスペースにゆったりと棚が配置されている。棚もたいてい背の高さまでで圧迫感がない。しかし、半分近くはエロ。文庫もちくま、講談社学芸・学術、岩波、河出などが極端に少ない。ご店主はずっとパソコンに向ってらしたので、たぶん主力はネットで販売しているのでは、と思えた。何か買ってかえろうと思ったが、買えなかった。お許しください。いや、駅前にこういう古本屋が一軒あるとないとでは大違いです。美術や文芸書もあったし。ああ、どうしてぼくは店の紹介がこんなに下手なんだろう。
向かいのミスドに入って、オールドファッションとアイスコーヒー、それにお土産に3つほどドーナツを買う。トイレで濡れたTシャツ(Tシャツでちょうどいい陽気だった)を着替えて、薄いアイスコーヒーを呑みながら、読みかけのJ・デイーヴァー『スリーピング・ドール』を読む。これは、リンカーン・ライムものではなく、美貌の捜査官(ウソを見破る天才)ダンスが主人公。
北朝霞武蔵野線朝霞台東武東上線。この二駅はくっついているのだが、以前、成増の印刷所に出張校正するとき、よくこの乗り換えを利用した。そのときは、がらんとした駅前だったが、地下に駐輪場ができて、駅前にも、どこの駅前にもあるようなドトールミスドといったチェーン店がある。しかし、武蔵野線のホームで電車を待っていると、そのよくある駅前や、ホームがなんだか殺伐として見える。都心への通勤圏だが、みな帰って寝るだけの、通り過ぎるだけの駅前という感じがする。平林寺や野火止用水、黒目川のロケーションはすばらしいが、ちょっと住む気にはなれない町だ。新座、朝霞在住の方が読んでいたら、ごめんなさい。
ブックジャパンに書評を書きました。そうか、北條くんが堀江敏幸を取り上げたばっかりだったのだな。
http://bookjapan.jp/search/review/200909/okazaki_takeshi_02/review.html