チャンネルneco泉谷しげる役者デビューとなったドラマ「戦後最大の誘拐 吉展ちゃん事件」を見て、激しく感応する。監督は東宝の青春映画の巨匠・恩地日出夫。ロケを多用したドキュメンタリータッチで、脇を固める俳優陣も芦田伸介市原悦子殿山泰司山谷初男と充実、風間杜夫が若い若い。阿藤海がチンピラBで出ていたり。ナレーターが伊丹十三。豪華だなあ。先に、映画版「一万三千人の容疑者」(1966)も放映され見たが、圧倒的に、このテレビドラマ版がいい。初動の段階で、警察側にありえないミス続き(ドリフのコントみたい)で犯人を取り逃がす。身代金一万円札50枚の番号を控えなかったり、犯人指定の取引場所へ、村越家が車で向うのを、警察は走って追いかけ、犯人確保に遅れ失敗するなどなど。電話の盗聴用のテープレコーダーも、被害者の村越家が購入。黒澤「天国と地獄」(これを見て、犯人の小原保は犯行を思い付く)には、被害者宅で逆探知の録音機を警察が設置するが、じつは、当時、日本では電電公社の制約があり、本当はできなかったと知る。荒川線「三ノ輪橋」近辺の風景が何度も映る。吉展ちゃん誘拐の公園も姿は変えたが健在。一度、吉展ちゃん事件の跡を訪ねようと思う。原作の本田靖春『誘拐』(文春文庫からちくま文庫)も入手せねばと思い、念のため、わが家のちくま文庫の棚へ行ってみると、なんとありました。しかも付箋が挟んである。そうか、既読であったか。さっそく読み始め、一日で読む。これは傑作。吉展ちゃんは、事件のあった昭和38年に4歳(もうすぐ5歳)だったから、ほぼぼくと同年代。事件発覚からマスコミ報道があり、以後、ひっきりなしにいたずら電話が村越家にかかってきて悩ませたなど、イヤな話もある。