今日はハルミンデイ

okatake2009-06-03

ハルミンさま直々、試写状に署名と宛名を書いてくださった映画「私は猫ストーカー」試写会が今日でラスト。なにがなんでも行かねばならぬ。これまでの試写会はいずれも満席で、ハルミンさま自身、まだ試写が見れていないという。30分前に着くよう、算段をたてて外出。国立で、函館行き航空券のお金を振り込んで、中央線。荻窪下車「ささま」へ。均一で、車谷長吉エッセイ集『雲雀の巣を捜した日』講談社、『建築散歩24 東京・横浜近代編』、エリザベス・サンダース・ホームの写真集『歴史のおとし子』読売新聞社を105円で。車谷のエッセイは行き帰りの電車であらかた読む。おもしろいが、同じ話の繰り返しがあんまり多いので、ちょっとなあ、と思う。『歴史のおとし子』は、撮影が影山光洋。好きなカメラマンだ。やっぱりコドモを撮るのがうまいなあ。
荻窪から丸の内線、銀座線と乗り継ぎ「新橋」へ。土橋交差点から銀座方面へ、山手線ガード下、地下へ降りるとTCC試写室がある。上京してすぐ、編集者として「十人十色」を作っているころ、映画担当として、よく試写室に通った。この土橋「TCC」へもよく来た。つるんとした白い壁の続く殺風景このうえない地下通路を行くと、いったい、こんなところに試写室があるのかと心配になる。TCC試写室は、20年近くぶりに来てみるときれいになっていた。階段状で、椅子もよくなっている。ぼくの記憶では、膝が前につかえ、床が平坦で、前の席に背の高い人が座ると、よく見えなかった。30分前に着いたのに、すでに席は半分くらい埋まっていて、関係者席に、三省堂の大塚ちゃんがいる。「おお、大塚ちゃん」。一番後ろの席に晶文社の面々が、その隣りに席を取る。あとから来た男性が、すいません、すいませんと言いながら、いちばん奥の席へ。見たことがあるなあ、と思ったら、あとで試写室へ入ってきた越川くんに挨拶して、話をすると、その男性は「赤い文化住宅の初子」で教師役をやった諏訪太朗さんだった。「私は猫ストーカー」にも、黒いトンビを着て自転車に乗る僧侶役で出演している。けっきょく、補助席、補助席が出る盛況で大入り。幸先がいいや。
私は猫ストーカー」は、自然光、自然音をそのまま取り込んだ、静かでキュートな映画だった。なにより、面魂のあるネコが多数登場。ブルーリボン賞並みの演技をする。いや、それも自然、なのだが。主演の星野真里さんは、これまでとくに印象はなかったが、ハルミン魂をみごと映像のなかで再現してみせたと思う。ネコの追いかけ方、ネコっかわいがりぶりが普通じゃない。
星野さんがアルバイトするという設定の古本屋「猫額洞(びょうがくどう)」は、ぼくが実際に見たそのままで画面に登場。店主の徳井優は、いかにもの、寡黙な古本屋店主になりきっていた。えへん、じつは、徳井優は高校の後輩だ。それも一年か二年下の学年だから、同時期に守口高校へ通っている。もちろん山本善行も。古本男を三人も押し出した守口高校って何?
あんまり淡々とすすむので、途中、7、8分ウトウトしたが、ほかはばっちり、楽しみながら見ました。ラストのハルミンさんの原画を使ったアニメーションもよかった。作りすぎないで、素材のよさをそのまま生かしたのが監督鈴木卓爾の手柄だ。
試写室を出たら、越川くんが背の高い男性と喋っている。あ、蓮實重彦だ。「私は猫ストーカー」の音楽が子息の蓮実重臣。あとで越川くんに聞いたら、蓮實さんは、この映画、絶賛されたそうだ。「7分長い。それがなければ完璧だ」とのこと。越川くん、喜んでいた。「蓮實さんがあんなに褒めること、ないんですよ」。ぼくがウトウトしたのがちょうど7、8分。つまり……
パンフレットには、ハルミンさんが好きな詩人の平出隆が推薦文を寄せるそうで、ハルミンさん、よかったねえ。
晶文社の宮里くん、千代ちゃん、大塚ちゃんと呑む。帰宅したら、嵐山光三郎著 浅生ハルミン画『旅するノラ猫』筑摩書房が届いていました。なんちゅう、グッドタイミング。今日はハルミンデイでありました。