西荻の夜

okatake2010-09-27

雨か。昨晩はちょっと飲み過ぎた。
高円寺即売会二日目で十冊ぐらい買う。ケルテスの初期写真集(洋書)が小ぶりので写真も小さいが好ましく500円。これがいちばん高い。あとはすべて300円以下。珍しく「図書」1970年12月号を買ったのは、岩波少年文庫20周年の子どもの本特集で、中野重治井伏鱒二庄野潤三吉田健一などがアンケートに答えている。
音羽館へ移動。奥さんにつきそわれた田村さん、鼻にチューブをつけた痛々しい姿で、いっしゅん動揺する。赤レンガで内堀さん交え、打ち合わせ。と言いながら、ほとんど雑談。そして、西荻ブックマーク開演。席はほぼ満杯。広瀬くんが撮ってきた「彷書月刊」編集部の映像がまず流され、田村さん、内堀さん、ぼくで話を「彷書月刊」について話をする。田村さん、喋るのも苦しそうだったが、よく最後までがんばってくださった。後半、この日できあがってきた『昔日の客』を持って、夏葉社さんに登壇してもらい、『昔日の客』話を。客席には山王書房未亡人と息子の直人さんが来ている。
『昔日の客』復刊に寄与したのは善行堂で、マラマッド『レンブラントの帽子』をたくさん売った善行堂が、「次は『昔日の客』を」とブログでリクエスト。「さいしょ、なんてことを言うんだ」と思った夏葉社さんだったが、それほど言うならと国会図書館まで行って借り出し、読んで感動する。人が人を動かす。そして生まれた本だった。お茶のようなシブい緑の布張り表紙に、白い帯と簡素ながらぜいたくな作り。しびれるような「紙の本」だ。「紙の本はなくなりますよ」と声高に言った、どこぞの大学教授の横っ面を張りたいような本だった。
打ち合わせで「あんまり喋りすぎないように」と言っていた内堀さんが、終盤になって、アリアのように、低いソフトな声で滔々と「山王書房」礼讃をしたのが、思いがこもり、すばらしかった。聞いてて音楽のように心地よかった。
『昔日の客』は、この夜だけで34冊売れたそうだ。すごい。
彷書月刊」が300号で終巻し、若い夏葉社さんが『昔日の客』を出す。日は落ち、日は昇る。最後に「CABIN」、事前に音羽館の均一で「これはいい本」だと田村さんが選んだ5冊(音羽館提供)、それに三人が署名した色紙などをこの日来てくださったみなさんにプレゼントする。
打ち上げ、二次会と関口直人さん、絶好調で、自作の中央線の駅名を折り込んだ歌をおどり付きで披露してくれたり、しんみりした話で涙ぐんだり。『昔日の客』が復刊された喜びがあふれていた。夏葉社さんは本当によくやった。
和民で二次会。終電まぎわに雨の中央線に飛び乗り、空いた車両でぼんやりしていたら、目の前に「あ、岡崎さんだ」と立ったのが久住兄弟(Q.B.B)。なんでも、さっきまで某所で「彷書月刊」連載の「古本屋台」ができる過程のことを、下書きから解説してきたそうだ。「最終回、岡崎さん、出てますよ」と言われ、よろこぶ。終刊号は特大号となり、少し発売が遅れ、10月頭になりそう。兄弟による新作絵本『1円くんと五円じい』ポプラ社をいただく。これで、なんだか一日のオチがうまくついた感じだった。
いま、月の輪さんからファクス。先日、五反田でのうっかり事件、ちゃんと次に精算できるよう取りはからってくれて、まったく心配しないでだいじょうぶとあって、ホッとする。すぐ電話してお礼を言う。勝手にうろたえたぼくが間違っていて、バカでした。少し賢くなろうと思う。