漂えど、沈まず

おかしな天気だったなあ。昼、急に暗くなり、遠い空で雷が鳴る。きなくさい空気が広がり、じつに不快な感じ。小学校のとき、春の午後、やはり天候がおかしく、空が絵の具を落としたような紫に変わったのに見とれていたことを思い出す。
午後は晴れ。半日かけて、飯の種になる定期的な原稿を書く。4時ごろ、娘が学校から帰ってきて、ちょうど虫が動き出したところだったので、二人でキューブに乗って「ブ」散歩。このところ、新潮文庫の改版になってカバーが新しくなったのを買い替えている。今日は、リルケ『マルテの手記』、シャーロック・ホームズを二冊買う。画家と新潮社装幀室が組んだリニューアルカバーはどれもいい。ホームズものなど、文字、イラストにエンボスの入ったじつにお洒落な仕上がり。買うのが楽しい。持つのがうれしい。そして、ちょこっと読み返す。これがこのところのマイブーム。マンガで、矢代まさこ『ノアをさがして』NTT出版、カネコアツシ『SOIL 1』エンターブレインを買う。後者は未知の作家だが、絵がユニークでめちゃくちゃ巧い。冬野さほ、という少女マンガ家が、やはりいいと聞き、『ポケットの中の君』マーガレットコミックスを買うが、こっちはマンガの文法が斬新で、ちょっと目で追いきれない。マンガの読解力では自信があったが、どうやら、もうかなりぼくの目は古いらしい。すごい作家がつぎつぎ出てくるなあ。
日経トレンディから取材依頼が入る。古本ネタ。
ネット古書店揚羽堂」の志賀浩二さんの著書『古本屋残酷物語』(平安工房・本体2000円)が送られてきた。サッポロの須雅屋(店名は須賀屋)さんとガチンコの貧乏ネタを展開。「小川書店」さんが「小川の兄貴」としてひんぱんに登場する。かの開高健の名言「漂えど沈まず」を贈りたくなった。
書肆アクセスの畠中さんがHPで、とても素敵な『彷書月刊』特集号の紹介を書いてくれている。とても、とてもうれしかった。